エクソシストは要らない

 Since the 1990s, Lithuania lost almost one-quarter of its population, and some regions within the country lost more than 50% of their residents. [...] While the socio-spatial changes are obvious in Lithuania, there is no clear strategy on how to cope with extreme population decline and increasing regional inequalities within the country.

 1990年代以降、リトアニアは人口のほぼ四分の一を失った。また一部の地域では住民が半分以上減少している。(中略)リトアニアでは社会空間の変化が著しいが、異常な人口減と地域間格差の悪化に対処するための明確な戦略は存在していない。

 Rūta Ubarevičienė & Maarten van Ham (2017) Population decline in Lithuania: who lives in declining regions and who leaves?, Regional Studies, Regional Science, 4:1, 57-79, DOI: 10.1080/21681376.2017.1313127



 何年も東京に住んでいると、大抵のことには驚かなくなる。ここには他のどことも違う秩序と、均整のとれた混乱がある。

 地球上で他に類のない高度で複雑な地下鉄があり、その車両に毎朝人々が文字通り押し込まれている。マリオカートとバニラ求人のトラックが道路を走っていても視線を送るものは誰もおらず、土曜日の朝のセンター街では酔い潰れた若者が折り重なるようにして倒れている。

 誰もが最初は驚くかも知れないが、多くの場合慣れるのにそう長い時間はかからないだろう。千亜希もそうして東京での暮らしに溶け込んでいったうちの一人だった。N大への進学を機にF県の田舎から上京してすでに七年。最初は東京のあまりの人の多さに驚いたが、今ではもう何も思わない。目の前を手を繋いでのんびり歩くカップルにイライラし、無言で彼らを抜かしていく程度には。

 六月の水曜日の夕方、今年最初のアイスコーヒーを千亜希は渋谷のスターバックスで買った。

 スクランブル交差点に面するTSUTAYAの真下に入っている店舗だ。エスカレーターで二階に上がり、席を探すと、ちょうど学生と思しき二人組が窓際の席を片付けているところだった。Supremeのボックスロゴと同じくらい席数の需要が供給を上回っているこの店舗では、すぐに席に座れるなんて願ってもない話だ。なりふり構ってなんていられない。早足で歩み寄り、奪うようにして席に座った。

 春人との待ち合わせにはまだ三十分ほど時間があった。スタバの二階に居るから来て、とメッセージを送る。